閲微草堂筆記』(えつびそうどうひっき)は、中国・清の紀昀が著した文言小説集である。

概要

蒲松齢『聊斎志異』の流行により、六朝時代の志怪小説復興は模倣者を生み活況を取り戻し始めたが、およそ80年経てこの動きに拍車をかけたのが袁枚(『子不語』の編著者)と紀昀である。「四庫全書」の総纂官であった紀昀は、『聊斎志異』を著書と認めず「才子の筆」であるとし、蒲松齢の才能を認めながらも作者の恣意による架構の世界を展開する戯作として低級なものと主張し、蒲松齢に批判的な姿勢を鮮明にした。

紀昀は、清の乾隆五十四年(1789年)から嘉慶三年(1798年)にかけて、『閲微草堂筆記』を執筆したが、『灤陽消夏録(らんようしょうかろく)』の自序によれば、乾隆54年(1789年)の夏、『四庫全書』事業の作業が終わっており長い昼、かつて見聞した珍しい話を思い出すままに書き綴ったものが『灤陽消夏録』となった。紀昀は字が下手だったので抄胥に清書させて保存するよう命じた。ところが抄胥は清書を2部作り、1部を書店に売って私腹を肥やした。これによって紀暁嵐 著『灤陽消夏録』六巻が刊行され(1789年、紀昀66歳)好評を博したらしい。気を良くした紀昀は以後も執筆を続け、『如是我聞(にゅぜがもん)』四巻(1791年)、『槐西雑志(かいせいざっし)』四巻(1792年)、『姑妄聴之(こもうちょうし)』四巻(1793年)、『灤陽続録(らんようぞくろく)』六巻(1798年、紀昀75歳)の順に単行刊行した。

清の嘉慶五年(1800年)に紀昀門人の盛時彦(せいじげん、字は松雲,順天大興(北京)の人)が合巻し、紀昀が校閲、『閲微草堂筆記』と命名し刊行(原刻本、全5種 24巻 1,200余篇)した。

日本語訳

  • 前野直彬 訳『閲微草堂筆記』 平凡社ライブラリー(上下)、2008年。上)ISBN 978-4582766417、下)ISBN 978-4582766431
    • 元版は『閲微草堂筆記(抄) 子不語(抄)他 中国古典文学大系42』平凡社、1971年
    268篇の抄訳。底本は原刻本と紀昀没後2年(1807年)刊行の盛時彦による重刻本を校合したもの
  • 黒田真美子 福田素子 編訳注『閲微草堂筆記・子不語・続子不語 中国古典小説選11 清代 Ⅲ』明治書院、2008年。ISBN 9784625664106
    原文対比、49篇の抄訳。底本は道光十五年(1835年)序の付いた北平盛による重鐫版刊本

注・出典

関連項目

  • 中国文学
  • 志怪小説
  • 伝奇小説
  • 六朝から清末の文言小説
  • 聊斎志異
  • 子不語
  • 述異記 (東軒主人)
  • 秋燈叢話
  • 諧鐸
  • 耳食録
  • 螢窓異草

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