ブンダヒシュン(Bundahishn)とは、「原初の創造」を意味し、中世ペルシアにおいて、ゾロアスター教の宇宙観の百科全書的な集成とパフレヴィー語で書かれた著作の名前でもある。もともとの名称は知られていない。アヴェスタの世界を描いているがアヴェスタの写本ではない。
内容
内容はゾロアスター教の経典を反映し、古代ゾロアスター教徒とゾロアスター以前の信仰の双方を反映している。アヴェスタの失われた8巻の内容に相当すると考えられている。
7世紀以降のイスラーム期のイランの事情も反映していると考えられる。
ブンダヒシュンにおいては、ゾロアスター教の創世神話、アフラ・マズダーとアンラ・マンユ(アーリマン)の最初の戦闘に関しても記述されている。
宇宙創世後の最初の3000年期において、アフラ・マズダーはen:Fravashisを創り、アンラ・マンユを服属させ、次の3000年期まで眠らせる。アンラ・マンユの不在中に、物質界の根源要素であるen:Amesha Spentas(聖なる不死者。神々。中でも特に6大天使を意味することが多い) を作り出し、en:Asha(参考アシャ・ワヒシュタ)で彼の王国を満たす(アシャとは、ヴェーダ語のアルタと同じ。「正義」「真実」を神格化したもの)。ブンダヒシュンは、最終的に、原初の牡牛en:Gavaevodata、最初の人間ガヨーマルトの誕生に言及している。
また、ブンダヒシュンは、若干サーサーン朝の誕生部分まで言及されており、アレクサンドロスがアヴェスターを焼き去った事、イラン国を90あまりの国に分割したことなども記載されている。
インド版、イラン版写本
現在インド版、イラン版の2つの校訂本が残っている。書籍のタイトルは、2つの校訂本のうち、イラン版の最初の文章の6語を適用していると見られている(より古い校訂本の先頭行は異なっている)。
最初の翻訳名は「Zand-Ākāsīh("Zand-knowing")、意味は「注釈からの知識」で、最初の行の最初の2つの語から取っている。
概要の章のほとんどが8から9世紀に遡り、デーンカルドのもっとも古い部分と同時代だと思われる。他の部分は、もっとも古い部分から数世紀新しいと考えられ、もっとも古い写本は16世紀中頃に遡る。
2つの校訂本のうち、短い方はインドで発見された。このコピーが1762年にアンクティル・デュペロンにより欧州へもたらされた。「インド ブンダヒシュン」といわれる。
イラン版は長く、1870年頃にT.D. Anklesariaにより、イランからインドにもたらされた。「イラン ブンダヒシュン」と言われ、通常単に「ブンダヒシュン」という場合、イラン版を示す。
この2つの校訂本は別々の写本系統に属しており、イラン版の方は1540年、インド版は1734年に遡る。
インド版はLesser(lBd)、イラン版はGreater(GBd)(「大ブンダヒシュン」)と略される。lBdはアラビア数字、GBdはローマ数字で章が分けられ、章の順番も両者は異なる。
章構成
各章は、もともとの題名と思われるものは、マッケンジーによりクォーテーションマークで括られ、マークの無いものはタイトルが無く、内容のサマリからつけられている。下記一覧中ローマ数字はGBd、2列目はアラビア数字でlBdのもの。
脚注
参考文献
- 伊藤義教『ペルシア文化渡来考』 岩波書店,1980年
外部リンク
- 野田恵剛「ブンダヒシュン(I)」中部大学国際関係学部論集,第4号,2009
- A translation of the Iranian or Greater Bundahišn by Anklesaria, Behramgore Tehmuras (1956) at Avesta.org
- An edition of the Indian Bundahishn in the original Pahlavi, with German translation, by Ferdinand Justi (1868) at the Internet Archive
- The Bundahishn (HTML format)

